今回は病気とは少し離れて、馬の悪癖について書いていきたいと思います。
聞きなじみのあるものからないものまであるかもしれませんが、馬を知るために、またどこかで触れ合う機会などがあった際に注意できる事も含まれますので、読んでいただけますと幸いです。
馬の悪癖を学ぼう!
今回は主な悪癖である「さく癖」、「熊癖(ゆうへき)」、「旋回癖」。
パドックを見る際に豆知識?として使えそうな「蹴癖(しゅうへき)」、「咬癖(こうへき)」。
その他に「起立癖」を簡単に紹介したいと思います。
「さく癖(さくへき)」とは?
さく癖の症状・原因
別称でグイッポと呼ばれることもあり、馬が馬房内や放牧地で柵を噛みながら空気を飲み込み「グっグっ」と音を鳴らせる行為で、一見ゲップをしているようにも見えます。
ここでも一応、悪癖に加えさせて紹介させて頂きましたが、最近の研究の結果でストレスからくる「心の病気」であることがわかってきました。
「さく癖をすると疝痛(せんつう)を引き起こしやすくなる」と言われていたので悪癖とされてきたのですが、これも運動不足やストレスからさく癖→疝痛という流れだという事も上記の研究で判明しています。
ただ、さく癖をすることで疝痛ではない、別の病気(大変難しいので気になった方は「網嚢孔捕捉」で検索してみてください)を発症する危険が増すとされています。
さく癖の予防法
外科的手術で強制的に治す方法もありますが、ストレスからくる癖だけにあまりオススメな方法ではなく、
- 放牧時間を長くする
- 放牧をした際に他の多くの馬と交流させる
- ウォーキングマシンや引き運動による運動不足の解消
- 柵に「クリボックス」という独特なにおい(嫌な臭い)がするペーストを塗り柵を噛めないようにする
- さく癖予防バンドというバンドを首上に着け、空気を飲み込むことを不快にする
などがあります。
「熊癖(ゆうへき)」とは?
熊癖の症状・原因
別称でふなゆすりとも言われます。
別称通り、馬房内や調教を終え洗い場に繋がれている時などに、前駆を左右にユラユラ揺らすしぐさです。
熊も檻の中などで同じようにユラユラと揺らすしぐさをするので熊癖と言われています。
これもさく癖と同様に馬房内での退屈さからやってしまうパターンや、他の馬がやっているのをみて真似をしてしまったりが主な原因で。
一見ソワソワしているようでかわいいしぐさにも見えますが、重い体をユラユラ揺らすことで脚にも負担がかかります。
バランス良く削蹄していある蹄が斜めに削れてしまい怪我をする原因になったり、蹄底を広げてしまったり(蹄底が広がると釘での装蹄が出来なくなる)、肢勢を悪くしたり…
馬にとって良くない事ばかりです。
熊癖の予防法
なんとなくお察しかもしれませんが、これも馬を退屈させないのが第一です。
その他には馬房の扉を閉めておくことや足枷(そっか)という修正用具を使うのも手です。
「旋回癖(せんかいへき)」とは?
旋回癖の症状・原因
読んで字のごとく、馬房内などでひたすら回ってしまう事。
有名どころでいえばサイレンススズカ、すこし癖のあるところでハクサンムーンがこの旋回癖もちでした。
これらの名前を出すと、この癖をもっている馬は強いのでは、とお思いになるかもしれませんが、蹄の成長を促したいときに終始歩き回られても摩耗してしまいなかなか伸びてきませんし、脚元がモヤモヤしている時に休ませなければならない時も、まわり続けられては脚を休ませることが出来ず、一向に良くなってきません。
また、馬体を大きくさせたくても他の馬よりも余分に体力を使ってしまうので思うように増えてこない。
あとこれは個人的な経験からなので一概には言えませんが、馬房内で回る事で汚い寝藁と綺麗な寝藁がごちゃまぜになり、馬房掃除が大変やりづらかったです。
以上の事からも悪癖と言われるだけの事があるのはお分かりいただけたかと思います。
旋回癖の予防法
じゃあ辞めさせれば…と思うかもしれませんが、これも強制的に辞めさせると、それがストレスになり体調を崩してしまったり、うるさくなってしまったりと、それはそれで馬に良くありません。
なので、旋回癖とは人ががんばって向き合っていくしかないのかな…と思っています。
もし修正方法を私は聞いたことがないので、もし文献や経験などで治し方を知っている方がいらっしゃいましたら教えてください!
「蹴癖(しゅうへき)」とは?
蹴癖の症状・原因
これも字のとおり、蹴る癖です。
パドックなどでも恐らく見かけたことがあると思いますが、尾っぽの付け根にリボンやボンボンを付けているお馬さん。
それが蹴癖を持ったお馬さんのサインです。
馬の蹴りは基本的に防衛本能からくるものです。
なので些細な音にびっくりしてしりっぱねをしたり、何かが脚に触れて嫌がって蹴ったり…要因は様々あります。
蹴癖の予防法
お馬さん自身の性格からくるものもありますが、事を覚えていく段階(馴致)で人に嫌なことをされたり、長い間脚に触れられるという行為をされてこなかったりで、この癖がついてしまう馬もいます。
以上のような言わば「人のせい」ともいえる時は、担当の人を変えたり、接し方を変えるだけでアッサリ解決する場合もあります。
※観光牧場や乗馬クラブなどのお馬さんは基本的に歳も重ねており精神的にも落ち着いており、人にも慣れていますが、「蹴らない」という保証は一切ありません。不用意に後ろからや横から近づいたりは絶対にしないようにしてください!
「咬癖(こうへき)」とは?
咬癖の症状・原因
そうです、咬みつく癖です。
これもたまにパドックで見られるかもしれませんが、タテガミあたりにリボンやボンボンを付けた馬がこの癖を持っているとされます。
咬癖の予防法
この咬癖は人との信頼関係がうまく築けなかったりすることにより、人=威嚇対象としてみてしまっている事により身についてしまいます。
裏を返せば、人との信頼関係を取り戻せれば治るので、矯正は比較的に楽と言えるでしょう。
ちなみに馬に咬まれるとめちゃくちゃ痛いです。
ブラッシングをしている時に脇腹を咬まれたことがありますが、皮も肉もすべてがちぎり取られたかと思いました。
指や耳をちぎり取られたなんて事もあるので、馬におやつを与える時には、基本的に手のひらで与えるようにしましょう。
「起立癖(きりつへき)」とは?
起立癖の症状・原因
これもわかるかと思いますが、立ち上がる癖です。
驚いたときなどに立ち上がってしまいます。
この起立癖は人馬共に大変危険な癖で、特に足腰や背中がまだ発達していない若い馬が立ち上がってしまうと、そのまま後ろに倒れてしまい大けがを負ってしまう可能性があります。
人が乗っている状態なら、当然下敷きになってしまいます。
起立癖の予防法
立ち上がろうとした際に、顔や頭を叩き、馬を叱り矯正する方法もありますが、完璧に矯正できる方法とは言えないのも事実。
一応矯正する馬具もあり、立ち上がろうとした際に力が鼻っ面に加わり立ち上がれなくする…と言う馬具になります(それでも力の強い馬は立ち上がってしまいますが…)。
これも普通に馴致をして乗っていれば環境に慣れ、馬は自分のやるべきことを理解し余計なことをしなくなるので、この悪癖をもった馬はそんな多くはいないかと思います。
さいごに
今回は少し病気とは異なる観点のお話をしましたが、これらの癖は馬を知るうえ、触れるうえでとても大切なことです。
またなにか思いつき次第、合間に挟んでいければと思っております。
ご精読ありがとうございました!
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