馬の病気を学ぼう!〜馬鼻肺炎ウイルス(ERV)〜

馬の病気を学ぼう ERV

話題のウマ娘のおかげもあり、競馬人気がさらに高まってきた印象がある昨今。

また実際に北海道を訪れて、本物の馬に会いに行ってくださる方々も増えているのは、イチ競馬に携わる者として、とてもうれしいことです。

ただ、牧場に無断で立ち入り馬を見る、触れる、ニンジンや草を食べさせる等のルールを守れない輩もいるとの記事を目にすると、何とも悲しいものです。

今回紹介する馬鼻肺炎ウイルスは、以前から牧場見学をしている人も、これから牧場見学に行こうかなと考えている人にも絶対に読んで頂きたい内容です。

目次

馬鼻肺炎ウイルス(ERV)とは?

馬鼻肺炎ウイルスはどんな馬にもかかる可能性があり、若馬がかかると発熱や鼻水リンパ節の膨張が見られます。

簡単にいうと風邪みたいな症状です。

しかしこのウイルスが繁殖牝馬(妊娠後期、妊娠9か月以降)の馬がかかってしまうと、流産もしくは生後直死を起こしてしまいます。

厄介なのは、繁殖牝馬が競走馬だったころに一度馬鼻肺炎にかかって免疫を持っていると、繁殖に上がったあとにかかっても症状が見られない場合が多いという事です。

どうやって感染するの?

このウイルスに感染するメカニズムとしては、自身の体内から再活性の場合もありますが、感染している馬からの飛沫感染流産を起こしてしまった後の羊水後産(胎盤)流産胎児等、そして人を介してというのが多いです。

馬鼻肺炎ウイルスは一度感染すると、生涯体内に潜伏するため再活性するリスクがあります。

再活性を起こす要因としては、体力の低下、輸送や寒さなどのストレスがあげられ、再活性したウイルスが子宮内に到達してしまうと流産を起こしてしまいます。

感染を防ぐには…

これに関しては正直防ぎようがなく、もし流産を起こしてしまったら馬房の消毒、寝藁の処分、また出産に携わった人の衣類の焼却処分等をし、とにかく他に被害を広げないようにしなければなりません。

他の馬からの飛沫感染に関しては、上がり馬(競走生活を終え、繁殖入りする馬)を牧場に迎える時や他の牧場から、繁殖牝馬を迎え入れた時、また育成も兼ねている牧場ですと、休養馬もいるのでとにかく繁殖牝馬用の厩舎に近づけない事がベスト。

新たな繁殖牝馬を迎える時は隔離厩舎に最低でも3週間は隔離しなければなりません。

人を介してと言うのは、上記にも書きましたが馬からの飛沫(鼻水や唾液)が服や体についている状態で他馬に触れて感染してしまったり、後産や羊水、流産胎児の処理をした後に同じ衣類や消毒していない手で他馬に触れてしまうと感染してしまいます。

勿論、馬鼻肺炎ウイルスのワクチンもありますが、ワクチンによる予防はパーフェクトとは言えません。

馬の親子

感染することによる影響

ここまで読んでいただければ、なんとなくお分かりかもしれませんが、流産もしくは死産してしまい検査をした結果、馬鼻肺炎ウイルスだったという事になると、他の出産を控えている馬も流産してしまう可能性が高くなってしまい、本当に最悪な場合は出産を控えている馬が全馬流れてしまうということも起きかねません。

生産牧場にとってその世代から1頭でも少なくなってしまうと、セリに出す頭数も減ってしまいます、もし種付け料を受胎条件(出生条件と選択できる場合もある)で払ってしまっていたら、そのお金も返っては来ないので大ダメージになります。(もしよろしければ「千代田牧場 セレクトセールを終えて」を読んでみてください。)

さいごに

冒頭でも書かせて頂きましたが、例えば他の牧場の見学をしてきた後に道路沿いにある放牧地に馬がいて、可愛いからと許可なく触れたり近づいたりしてしまうと、もし先に行った牧場で触れ合った馬が馬鼻肺炎ウイルスを持っていたら…

手は洗って消毒はしていても衣服についているウイルスは取れず、後に触れた馬に移してしまう可能性も十分あります。

無断で立ち入ることや、許可なく馬に触れることが自分自身は大丈夫であっても、最悪の場合牧場をつぶしてしまう可能性もある事、これを頭に入れておくだけでも行った際の意識も大きく違う(変わる)と思います。

あくまで私たちは「会いに行かせてもらっている」立場。

このことも頭にいれ、牧場見学を楽しんでいただければ幸いです。

またこのウイルスは寒さに強いので、冬場は安易に感染してしまう為特別注意が必要です。

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