馬の病気を学ぼう!〜疝痛〜

馬の病気を学ぼう 疝痛

前回の悪癖でも少しだけ触れた疝痛

つい最近ですと、今年のダイヤモンドSを勝利したグロンディオーズが目黒記念後に骨折してしまい、療養中にこの疝痛を発症し安楽死という事象があったのが記憶に新しいかと思います。

目次

疝痛とは?

この疝痛と言うものは胃や腸管の消化器官の疾患を原因とする腹腔内の疼痛を示すもの。

ものすごくザックリ言うと腹痛の事です。

すべての腹痛を含むだけあり、原因、症状、重症度も様々なので、病名を断定するのは大変難しいです。

次にいくつかある疝痛の種類について説明していきます。

風気疝(ふうきせん)

胃や腸内にガスがたまることで起こる疝痛です。

腐った飼料を食べてしまったり、発酵性飼料の過食などが原因で発症します。

強い痛みをともない、発症すると前掻き(前肢で地面を掘るしぐさ)をしたり、横たわったりします。

腹囲の膨大が特徴的で特に右側のお腹が膨張します。

大体は鎮痛剤を投与すればよくなりますが、後々説明する便秘疝や変位疝に継発する場合もありますので、注意が必要です。

痙攣疝(けいれんせん)

腸が痙攣してしまう疝痛です。

強い調教などによるストレスや興奮、寒冷により腸の動きが一時的に活発になりすぎてしまい発症するといわれております。

発症するとこれも前掻きをしたりします。

比較的に軽度の痛みであり、1度鎮痛剤を投与すれば治るケースがほとんどです。

便秘疝(べんぴせん)

読んで字のごとく、便秘による疝痛

休養や運動不足により腸の動きが弱くなり、消化官に内容物がたまり発症します。

腸の中の水分が少なくなるため便が小さく硬くなったり、数日間、糞が確認できなかったりが特徴。

便秘が長引いてしまうと風気疝を引き起こすこともあります。

排尿姿勢を頻繁に見せたりするのがサインで、軽度なものだと電化質の投与や下剤の投与により改善することもありますが、重度になると開腹手術が行われることもあります。

過食疝(かしょくせん)

穀物やペレットなどの濃厚飼料を多く摂取したり、急激に飼葉を食べたりすることで胃が拡張してしまい発症します。

定期的な痛み、もしくは継続的な激しい痛みをともない、悪化すると鼻から胃の内容物の逆流が見られ、胃破裂に繋がるケースもあります。

胃破裂を起こしてしまうと、もう助かりません。

余談ですが、胃破裂は人間の場合、交通事故や転落してしまった時などに腹部に強い衝撃を受けたときに起こしてしまうことがほとんどですが、馬の場合はいきなり破裂してしまうこともあります。

食べ物が口に含まれ、その後食道を通り胃の入り口である噴門を通り胃の中に入ります。

そして、ある程度消化された食べ物は胃の出口である幽門を通り腸に行きます。

馬の噴門の筋肉はとても発達しており、一度胃に運ばれた食べ物は食道に逆流させることは困難とされています。

そのため、嘔吐はもちろん、ゲップもできません。

また幽門もある程度消化できないと腸に送り届けられないので、胃の中で食べたものが異常発酵してしまったり、消化機能不全を起こしてしまうと内圧に耐えられなくなり、胃破裂を起こしてしまいます。

寄生疝(きせいせん)

これも名前の通り、寄生虫が消化器官に大量に寄生することで起こしてしまう疝痛です。

近年は駆虫が一般的になってきたのであまり見られない疝痛です。

過去の症例ですと、腸閉塞や腸破裂を起こしてしまい、死んでしまったことも。

放牧して放牧地に生えている青草を摂取する事で寄生虫は馬の体内に入ってしまうので、計画的な駆虫が予防につながります。

変位疝(へんいせん)

これは腸がねじれてしまう、いわゆる腸捻転(ちょうねんてん)などが原因の疝痛です。

馬房内や放牧地でのたうち回ったり、大量の発汗、ひどい歯ぎしりなどがサインであり、これは多くの場合、手術が必要になります。

ちなみに、腸捻転は便秘や放牧地で青草と共に砂や石などを飲み込んでしまい、それが腸に届いてしまい捻じれてしまったり、出産後に腹腔内に占める子宮の容量が急激に変化することにより、腸の可動域が増加することで起こしてしまったりします。

ちなみにドバイワールドカップを疝痛のため取り消しとなったケイティブレイブ、は結果的に腸捻転を起こしており手術を行ったとニュースなどで報道されていましたが、捻転はしておらず別の臓器の間に腸が入り込んでしまう、絞扼性(こうやくせい)ヘルニアみたいなものとのことです。

その他

ストレスで起こしてしまう胃潰瘍、発症率は少ないが子宮捻転鼠径ヘルニア(脱腸)などがあげられます。

放牧中の馬

どうして疝痛になりやすいの?

次に馬が疝痛になりやすい理由についてです。

過食疝のところでも触れましたが、馬は胃が小さく尚且つ噴門が発達しているので嘔吐が出来ません。

それが胃拡張や胃破裂、胃潰瘍に繋がります。

その次に、腸間膜の長さと結腸が固定されていない事があげられます。

馬の小腸は腸間膜によりつるされているため、腸間膜が長いことで横に捻じれてしまいます。

結腸が腹壁に固定されていないことで縦に捻転してしまいます。

その他に長官の太さが場所によって異なる事で、細くなっている場所に内容物がたまってしまい便秘を引き起こしてしまいます。

疝痛の予防法

まずは適切な飼養管理があげられます。

風気疝、過食疝の部分でも触れましたが、濃厚飼料を過度に与えないこと、一度に多くの量の食事を与えるのではなく、数回に分けて与えることが大事です。

また便秘疝でも触れましたが、水分不足も疝痛の原因になるため、水の摂取量に気を配る事、きれいな水を用意してあげることも重要です。

その他に、歯の状態が悪く飼料がすりつぶせず、胃の中で消化されにくくなってしまい、異常発酵をしてしまうと考えられているため、歯の管理も重要と言えます。

後は、日常でちゃんと糞をしているか、また糞の中に砂が混じっていたりしないか等も注視する必要があります。

馬の生活をしっかり管理することで防げる疝痛が多いことが分かりますよね。

さいごに

予防できる疝痛は多くあり、変位疝以外は手術を行わなくても回復するケースが多くあります。

しかし甘く見ると重症化してしまう場合もありますので、異変があったら速やかな対処が必要と言えるでしょう。

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